国家試験受験【10回】

by | Jul 30, 2014 | 連載記事 | 0 comments

傾向と対策

私が公認移民コンサルタントになるための国家試験を受験した当初は、過去問題やサンプル問題を解いて傾向と対策を学ぶということはできませんでした。そういったものが存在しなかったのです。事前に知らされていたことは、「試験時間は3時間で問題が100問」ということと、「問題はケースシナリオが主」ということだけでした。これを聞いた時、私は愕然となりました。単純計算で1問につき1.8分しか時間を費やせないということだったからです。ケースシナリオがどれくらいの長さなのかにもよるけれど、相当急がなければ全問解くことさえ不可能かもしれないと思いました。試験日が近づけば近づくほどこのことが不安になりました。日本の大学受験のように、何らかの問題を解くことができれば少しは気持ちが落ち着いたのかもしれませんが、何もなく、手探りの状態で試験を受験することは正直不安だらけでした。

いよいよ決戦の日

あっという間に国家試験の受験日前日になりました。夜はそわそわして寝つくまで大変でしたが、自分に暗示をかけるようにして気持ちを落ち着かせました。大事な試験の前日はいつもそうやって睡眠を多めに取りました。朝起きていつも通り支度をして試験会場へ行くと、一緒にImmigration Practitioner Programを卒業したクラスメートが何人かいてほっとしました。知っている顔を見ると心が和むものです。お互いにGood luckと言って着席しました。試験日までの数ヶ月間一緒に勉強会をして励ましあった、私がクラスで一番仲が良かった友人は私の右斜め前に着席していました。

私達が試験会場に持ち込むことを許されたのはただ一つ、それは移民法の分厚い本のみでした。1問につき1.8分しか時間がないことを知っていたため、試験を受験した人のほとんどはこの本を実際に開ける暇などなく、「お守り」でしかないことを良く知っていました。何条が何を意味するか、それはすべて頭の中にありました。

試験

試験問題が配られると、その分厚さに誰もが小さいため息をついていました。「これは1問ごとのケースシナリオが長いのだな」と直感で分かりました。その時になって私は「今日はコンタクトではなく、メガネにすればよかった」などと考えていました。”You may begin now.”という試験官の言葉と共に試験問題を見て驚きました。思ったとおり試験問題の長いこと。1問1問シナリオが違い、まずその内容を理解してから問題を解き始めるので1問を解くのに随分時間がかかったように思いました。時々テーブルに置いた腕時計を見ながら、時間配分をしました。問題を解いているうちに「あっ」と思うことが何度かありました。ケースシナリオを読んだ瞬間すぐに回答が分かる問題と、シナリオを理解するのに少し時間がかかる問題があったのです。回答がすぐに分かる問題の多くは、以前弁護士事務所で働いていた際に実際に担当したケースのシナリオであったり、その時期に実践で学んだことでした。今から考えるとあの時の就労経験があったからこそ時間をかけずにすぐ回答できた問題が多く、そしてその分余った時間を難しい問題にまわすことができたのだと思います。
それでも3時間で100問をすべて解くということはとても困難なことでした。どうしても分からなかった問題がいくつかあり、一応回答はしたものの「後でもう一度見直そう」と問題に丸をつけ、先に進みました。試験終了間際にそのいくつかの問題を見直しましたが、「もう少し時間があれば分かったかもしれない」という問題が数問残りました。試験が終了した瞬間、右斜め前の友人が振り向きました。”Aya, I didn’t finish all of them.” と泣きそうな顔で私を見ていました。聞いてみると、最後の20問を解く時間がなかったとのことでした。周りを見回しましたが皆放心状態の顔でした。すべての力(知識)を出し切った、という感じの顔でした。私も疲れ果てていて、帰宅してからそれまでの勉強疲れを取り戻すかのように何時間も寝てしまいました。試験結果は1ヵ月後にEmailで知らされる予定でした。

次回は試験結果通知を振り返ります。