No. 49 – 個人移民申請の現実

by | May 10, 2017 | 連載記事 | 0 comments

ワーキングホリデーでカナダに滞在していらっしゃる方、語学留学で就学されている方、ビジターで数度カナダに来たことがある方などで、カナダでビザの期間に縛られず暮らしてみたいと思った方であれば、皆さん少なからず移民権申請のことを考えられるかと思います。今月は2015年1月1日に発足したExpress Entryプログラムの傾向も含め、個人移民申請の現実についてお話致します。

誤った解釈

「Collegeの2年のプログラムを卒業して、1年間スキルを要する職種で就労すれば移民権が取れます」というアドバイスを受けたことはありませんか? 現在就学中、或いは卒業された方で、弊社にお越しになられる方の大多数がこのアドバイスを受け、College入学を決められたとおっしゃいます。また驚くことにExpress Entryの仕組みを知っている方も少なく、ほぼ皆さんが「とにかくCollegeを卒業してスキルを要する職種で働けば移民のチャンスはある」と思っておられるようです。
(改行)声を大にしてはっきりと申し上げます。Express Entryが発足する前はこのアドバイスは有益でしたが、現在は全く異なります。残念ながら個人移民申請は(現在の法律の下では)そう簡単なものではありません。申請条件を満たし、Express Entryに登録し、他の登録者とポイントで競い、移民局から選抜され、ITA(招待状)を発行されて初めて移民申請ができるのです。この「他の登録者とポイントで競い」という部分がとても大きな壁となります。

現実

Express Entryの動向をご覧になればお分かりになるかと思いますが、ITAを受領するためには最低でも450ポイントが必要です。Collegeを卒業し、1年間スキルを要する職種にて就労された方のポイントを計算すると、大概皆さん400点~430点程度です。言語テストの結果によっては400点に届かない方もいらっしゃいます。従って移民申請条件を満たしていても、Express Entryの点数が450点に満たないという理由でITAを受領できないため、移民申請ができないという現実に気付かされます。言語テストの結果を伸ばすにはそれなりの時間が必要であること、伸ばしたとしてもITAを受領するにはまだ点数が足りないこと、またPost-graduation Work Permitは最大でも3年間という時間制限があることなど、現実を知った方は皆さんとても苦しんでいらっしゃいます。

追加600点

Express Entryの点数を600点追加する方法が2つございます。1つは雇用主に頼んでService CanadaよりPositive LMIAを取得してもらうこと、もう1つは州推薦プログラムにて推薦状を取得することです。Positive LMIAの取得はとてもハードルが高いことは多くの方がご存知かと思います。Positive LMIAを取得するためには、雇用主が「このポジションの職務内容を遂行できるカナダ人該当者がいないため、どうしても外国人を雇わなければならない」ことを政府に証明しなければなりません。しかしながらCollegeを卒業したばかりの人のポジションについてこれを証明することは不可能に近く、全く現実的ではありません。
二つ目の方法ですが、州推薦プログラムは人数制限が毎年あり、また審査基準も(移民局ではなくその州の政府が個別に行うため)不透明な点が数多くあること、また州によっては長い審査時間を要すること、カテゴリーによっては雇用主にテンポラリーではなく終身雇用を保証してもらわなければならないことなどから、こちらもハードルが高いと思われる方も多いようです。
従ってExpress Entryにおいて追加で600点を取得するということは、残念ながら簡単なことではありません。

移民申請を目指してカナダに留学する意味

留学生として莫大な授業料を支払い、必死で勉強してやっと就職したにも関わらず、最終的にはカナダに移民するチャンスがないという事実を知った人達が今、留学を取り消すケースが相次いでいるそうです。またこれまで勉強に勤しんできた留学生達がいざ移民申請のことを考えた時に、この事実を知って泣く泣く帰国されているという事態も見ています。いずれにせよ現在のExpress Entryのシステムは留学生にとってあまりにも壁が高いと言えます。
今後この問題を移民局の大臣が受け止め、法律の改訂を行っていくことを切に願って止みません。