ビジネススタイルの相違【14回】

by | Jul 30, 2014 | 連載記事 | 0 comments

ジレンマ

親しい友人の旦那さんに投資のオファーを頂いてビジネスパートナーとなり、一緒にビジネスをするようになって暫く経った頃から色々な場面でお互いの考え方やビジネススタイルの違いに気付くようになりました。ビジネスでお世話になる方々への対応や言葉遣い、お金のことなど、どれをとっても私の考え方、やり方とは全く違っていました。特に人への接し方がとてもアグレッシブで、私には理解し難いほど威圧的なことが多々ありました。お互いに違う国で育ったのだから文化やビジネススタイルの違いはしょうがないと何度も自分に言い聞かせる日々でしたが、それでもやはり「この人と一緒にビジネスをすることになって良かった!」と思う機会があまりにも少なく、次第に「これで良かったのだろうか‥‥」と思うようになっていました。

移民法律事務所で勤務していた時、弁護士は皆フレンドリーとは言い難い存在でした。彼らのビジネスのスタイルも「日本ではこんなやり方だったら大変」と思うことも正直ありました。でもそういうことがある度に「いつか私が日本人をお客様としてビジネスをするようになったらこう対応しよう」と思うようになり、その頃から次第に弁護士のLegal Assistantとして働くことではなく、トロントの日系コミュニティーで公認移民コンサルタントとして自分のビジネスをすることを夢見るようになったのを覚えています。 国家試験に合格し、資格を得て独立し、晴れて自分でビジネスするという夢が叶った今、私は自分が描いていたビジネスをせずにパートナーに押されるがままになっていていいのだろうかと思うようになりました。

苦悩の末に出した結論

彼とビジネスパートナーとしての仲を解消しようと思ったきっかけは、仕事のやり取りをしている時に彼が電話口で金切り声をあげて私に怒鳴りだした時でした。「この人とはビジネスは一緒にできない。」その時はっきりと結論を出しました。怒鳴られて驚いた気持ちと、それまで心の中でもやもやしていた気持ちが吹っ飛んだかのような複雑な気持ちでした。彼の奥さん(私の友人)はそれが彼のビジネススタイルだから気にしないで、と私に言っていましたが、それが彼のやり方であっても、決して私のやり方ではないと強く思いました。1週間彼との距離を置いた後、パートナーシップの解消を申し出ました。正直に私と彼のビジネススタイルの違いについて説明し、文化の違いと言うにはあまりにも問題が大きすぎるためお互いの為にも関係が悪化する前に解消するのがベストではないかという気持ちを伝えました。彼はあっさり了承しました。恐らく私と同じことを彼も感じていたのだと思います。

私が一番心配していたのは実は彼との関係よりも友人(彼の奥さん)との友人関係でした。お互いに学校で励まし合い、国家試験を一緒にパスした大切な友人です。彼女が私を信頼してくれたからこそ、彼女の旦那さんは私をビジネスパートナーとして信頼できると思って下さったのだと心から感謝しています。旦那さんとのパートナーを解消することで彼女との友人関係も解消されてしまうのではないか、という不安な気持ちでいっぱいでした。でも私の心配は無用でした。彼女はとっても大人で、「残念だったけれど、早くに分かったから良かったわ。プライベートでは私の旦那も含めて私たち3人はこれからも友達よ。」と言ってくれました。優しい友人を持って幸せに思いました。私も同じ対応ができただろうかと思うと、彼女は本当に大人だと 感じました。

学んだこと

この経験から学んだことがあります。それは「相手をよく知ること」です。とても基本的なことなのですが、私も彼もこれができていなかった為にビジネスのパートナーシップを解消することとなりました。お互いの性格や文化の違い、考え方の違いが予め明白に分かっていたら、私はきっとパートナーシップのオファーをお受けすることはなかったと思います。お友達として仲良くなることはできても、ビジネスとなると違うものだということも同時に学びました。色々あったけれど、彼が私をビジネスのパートナーとして認めて下さったことや、この経験を通じて学ぶ機会を与えて下さったことを今でも感謝しています。

次号は初心に戻り、自分のビジネスを見直した経緯を振り返ります。