3年間の学生生活の始まり【6回】

by | Jul 30, 2014 | 連載記事 | 0 comments

移民弁護士事務所初日

Seneca CollegeのParalegal Programの卒業条件であるField Placement期間中は本当に素晴らしい経験をしました。毎日が新しいことの連続で、そして自分が情熱を持っている分野での仕事だったので毎日朝起きて出勤する時もワクワクした気持ちでした。
初日は事務所の弁護士やスタッフとの自己紹介から始まりました。Supervisorの人は偶然にも同じプログラムを卒業された先輩で、右も左もわからない私に1からすべて教えて下さり、とても可愛がって下さいました。二人の弁護士はとても話しやすく親切な方々でした。弁護士というと、とても話しにくいイメージを持っていましたが、「質問がある時はいつでもオフィスに来なさい」とおっしゃって下さいました。大きな事務所だったのでLegal Assistantは多く、私を含めて8名ほどが働いていました。皆とてもフレンドリーで、それでいて仕事ができる方々ばかりでした。私はそれまでオフィス(留学センター)で働いた経験はありましたが、弁護士事務所の雰囲気はさすがにその時と全く違い、緊張感とプロフェッショナリズムを常に感じるような職場でした。

24時間ポリシー

始めの頃はひたすらクライアントさんとのメールのやり取りをしていました。その弁護士事務所はクライアントさんとのコミュニケーションを(書面で保存するために)極力メールで行うというスタイルでした。そしてこの弁護士事務所のユニークな方針として24時間ポリシーというものがあり、それは「クライアントさんからのメールに24営業時間以内に返答する」というシステムでした。もちろん、それをするのも私たちLegal Assistantの役目でした。朝出社すると、最低でも50通のメールが来ています。その一つ一つに対して正しい答えを返答することが私の最初の仕事でした。しかしながらケースの進み具合や内容を知らない私にとっては、クライアントさんのケースを一つ一つ学んで理解するとことから始めなくてはならず、50通以上ものメールに対して正しい返答をすることは容易ではありませんでした。さらに返答内容は常にSupervisorによってモニターされていましたので、皆緊張感を持って仕事していました。
この時の経験は今の私の仕事のスタイルにとても影響しています。クライアントさんから時々「綾さんのメールのお返事は瞬時に返ってくるのでびっくりします」と言われることがあるのですが、まさにこの時に習慣になったことが今の仕事に生かされているのだと思います。

書類の山との格闘

しばらくするとメールの返答だけでなく、弁護士から移民審査官に宛てたSubmissionレター作成、申請書作成やケースReview(添付書類の確認、不足連絡など)も任されるようになりました。あっという間に私のオフィスには私の頭の高さを越える書類の山が何列もでき、毎日出勤すると気が付く頃には退社、という日々が続きました。あまりにも仕事の量が多いので驚き、私は何人分の仕事をしているんだろう・・・と思うこともありました。Legal Assistantは弁護士に代わって書類作成をする大事な役割のため、どんなに小さなタイプミス、文法ミスも細かくSupervisorに注意され、「やっぱり私のような完璧でない人間にはこの仕事は向かないんだわ」と落ち込んだ時もありました。特に英語が第二言語である私にとっては弁護士の代理としてパーフェクトな書類を作成し、間違えのないようにクライアントさんに指示を出すということはとてもハードルが高く、本当に苦労したのを覚えています。

嬉しかったけれど・・・

Field Placement期間がなんとか無事に終わり、これでSeneca Collegeを卒業できると思っていた矢先に弁護士の一人から彼のオフィスに呼ばれました。「君の仕事のスタイルが気に入った。今後もこの事務所で働いて欲しい。」とのことでした。私はこの方々に必要とされているんだと思うと、光栄でした。その後も引き続き働いて弁護士の下で貴重な実務経験を養いましたが、身を粉にして働けば働くほど、私の本当にやりたいことから離れていっている気がしてなりませんでした。毎日出社してファイルの山を見る度に心の中で「日本人のケースがきてくれないかな」と思っている自分がいました(実際には1件もありませんでしたが・・・)。
やはりカナダに住む同じ日本人の方々の移民やビザのご相談を直接伺ってアドバイスをしたいという気持ちが強くなり、弁護士事務所を退職して私自身が公認移民コンサルタントの資格を取る決意をしました。結果的にはLegal Assistantという職業を辞める結果になりましたが、弁護士事務所で学んだレベルの高い実践的な業務は今の私にとってかけがえのない宝物だと思っています。
次号はSeneca Collegeでの二つ目のプログラムについて振り返ります。