コモンロー【21回】

by | Aug 1, 2014 | 連載記事 | 0 comments

コモンローってなに?

カナダにある程度の期間滞在していらっしゃる方は「コモンロー」というステータスを耳にしたことがあるかと思います。実際、カナダではコモンローのカップルをよく見かけます。結婚しているカップルと、何が違うのでしょうか。

カナダの家族法でのコモンローの定義は「12ヶ月間以上同居していること」です。12ヶ月間以上一緒に同棲し、結婚しているカップルと同じく経済的なことも含めて全てをシェアしているカップルを指します。日本で言う「事実婚」と似た意味合いですが、カナダでは日本のように「戸籍」という概念がないため、自己申告という形で「私たちコモンローなの」と言うことができます。年に一度のインカムタックスもコモンローとしてファイリングできますし、パートナーの会社から福利厚生をコモンローとして受けることも可能です。要は結婚しているカップルと法的なことはほぼ変わらず、コモンローとして様々な権利を得ることが可能ということになります。実際結婚せず、何十年もコモンローとして過ごして子供を一緒に育てるカップルもカナダでは存在します。

移民法ではどうか

さて移民法でのコモンローというステータスはどうでしょう。「移民申請日からさかのぼって過去12ヶ月間以上パートナーと同居している」ことが条件となりますが、それだけではありません。弊社にお越しになられるお客様で一番多い質問が、「彼と既に一 年間同居しているのですが、コモンローで申請可能ですか?」という質問です。残念ながらその 質問をされる方のほとんどが申請をすることができないのが現況です。お相手の方と一緒に住めば申請できる、ということではありません。お二人の関係が正当な関係であること、パートナーを利用してカナダでの移民権を取得しようとしているわけではないということ、お相手の方がスポンサーになれる条件を満たしていらっしゃるか否かということなど、様々なことを移民局に証明する必要があります。またオフィサーは申請者一人一人の家を訪ねてお二人が同居しているかどうかを確かめる訳ではありません。従ってお二人の同居を証明する書類や、経済的なこともシェアしているということを示す書類も必要となります。

弊社へお越しになられる方でコモンローとしての移民申請をご希望の方に「この書類は持っていますか」とお伺いすると、「そんな書類は持っていない」という方がほとんどです。或いは私がお相手の方とお話させて頂き、その方がスポンサーとしての条件を満たしていらっしゃらないと判明する場合もございます。いくらお相手の方と真剣にお付き合いをしていて、せっかく一年間同居していたとしても、書類不備や他の何らかの理由で申請すること自体が不可能となってしまうと、その1年間は時間の無駄になってしまいます。

アドバイス

もしご自身がコモンローとして移民申請をご希望でいらっしゃるのなら、一つだけアドバイスをさせて頂ければと思います。それは「専門家の指示に従って予めプランニングをすること」です。時間を無駄にせず、確実な方法で移民申請をしたいのであれば必ず専門家に指示を仰いで下さい。まずはお相手の方がスポンサーになれる条件を満たしていらっしゃるか否かということを審査してもらい、コモンローとしての正当な関係を証明するにはどういった書類が必要かということを予め把握し、指示に従って二人で移民申請まで12ヶ月間かけて準備をして、万全の状態で申請という形に持って行くことがベストです。経験豊富な移民コンサルタントや移民弁護士であれば、どういった書類を移民局のオフィサーが欲しているか、心得ているはずです。実際、弊社でお客様にお渡ししている移民申請必要書類リストは移民局がウェブサイトに記載している書類よりもはるかに多く、細かく内容の指示を しているものです。

時々ご自身でコモンローの移民申請をして審査期間が2年も3年も超えた、というケースを聞きますが、それは典型的な「申請書に不備の多いケース」です。不備が多いケースはオフィサーがケースを一時保留にし、申請者に追加情報や書類をリクエストし、またレビューして、の繰り返しでいつまで経っても申請が完了しないことがあります。書類の中には有効期限があるものもありますから、再度取得し直しをして‥‥なんてことをしているうちにあっという間に数年経ってしまいます。

コモンローとして移民申請することはそう容易なことではありません。莫大な書類を12ヶ月間集める根気強さ、そしてその手 順をきちんと理解し、サポートして下さるパートナーが必要になります。これをお読みになられた方で、コモンローでの移民申請を希望していらっしゃる方が早い段階で専門家にご相談に行かれることを願っています。